
ダイアモンドの犬
デヴィッド・ボウイ
1974/4/24
何かを為すためには動機が必要です。
ミュージシャンの場合ももちろん。新作アルバムを作る時には。
その動機の中で最も品性下劣なのが、銭そして名声の為に作るつもの。
恐ろしいことに音楽ってのは正直。
我らのように聴き込む輩には透けて見えてしまう。
そのような品性下劣な動機が。およそそのようなもので傑作は有りえません。
そして次に情け無いのが、”契約”で作るもの。
待遇悪し、態度悪しのレーベルから抜け出すため、仕方無く発表する。
大概はベスト盤、ライヴ盤、お蔵入り曲集。
これもおざなりの場合多いっすが、優れたミュージシャンの場合、
己のプライドがそれを許さず、製作過程でつい熱が入ってしまい、結局傑作となっちゃって、あーあ、俺馬鹿だなあみたいな結果となる時も。
業だよな。
最も当然且つ必然なのが、やりたいこと、対象が胸の内バンバンではちきれんばかり、意気揚々と満足出来るまでやるぜの場合です。
はい、そう。
ここにおります英国男、
デヴィッド・ボウイ氏
彼こそは音楽やるに最も動機を必要とする男。
音楽人生生涯を持って一つの何かを追い求めて連作となる音楽芸人もおる。
永遠に続きの方々。
それに対して、1作1作、新たな何かが無ければ動けぬ人も。
ボイちゃんはそんな人です。
その対象がでかければでかいほど、ラッパ吹いてみんなが仰天しそうならしそうなほど傑作となる。
ちょっとでも油断して、軽い動機で作っちゃった日にゃあ、モロそれが出てしまう正直さん。
そしてこの
ダイアモンドの犬
〜Diamond Dogs
1974年4月24日公開。

これはもう吹くラッパでっかいでっかい。
相手は何しろジョージ・オーウェル氏の近未来暗黒小説”1984”ですから。

1948年に書かれ、近未来の体を為しながら”48年”を”84年”と引っくり返し今を書いたとゆう。
思えば私、このアルバムが出た頃読んだ。ボイちゃん同様、ぐがんとショック受け。
今でも権力が集まり腐って行く果てはこれと、行くところ行くところ悪代官悪商人在りの水戸黄門ぐらいひきづってます。
しかもこの小説には黄門さま不在、とことん悲惨な結末が待ってるから。
カタルシスどころじゃありませんわ。カタルシス死す。

ボイさん、自らの遺伝的狂気の恐怖にスタアになってからも常に襲われていたと。
解決は、結局逃げることじゃ無く、思い切りそれと対峙することと腹くくって音楽と対決してました。
ここにその果て有り。
対象は先の1984の暗黒。発売日も1974年4月24日とゆうこだわりよう。
手法はより自分も意図せぬほどの心の深くをさらけ出させる為の、ウイリアム・バロウズ氏提唱のカット・アップとゆう手法。
一つのテーマに対する印象の語で歌詞を書き、敢えてそれを解体して、ランダムにつなぎ合わせて浮き出させるてば。
歌詞解釈は、これからなので、まだその様相は掴めませんけど、恐らく文脈はぐだぐだ、普通で言う意味はわからんかと。
それもあったのか、ダイアモンドの犬ってこのジャケを知ったのか、オーウェル氏の遺族から許可がおりず、小説との直接的つながりは困難になり、
舞台化さえしようとしてた意欲も消され、それでもなお為し切った。
鮮明にそがわかりますのが、これが初の自身プロデュース、一部を除いて朋友のトニ・ヴィスコンティ氏の助けを借りず、
それにもましてリズム・セクション以外は全部自分で演奏しようとしたことだ。
ミック・ロンソン兄貴は既に土曜日の誘惑に駆られて離れてしまった。
ここで掻き鳴らされるエレキ・ギタアは”1984”を除いてすべてボイちゃんのものです。
正直申して不器用。粗目。
しかしそれが返ってこの悶え苦しむ訴求を際出させる結果に。
そして何より、
動機マンパンの時のボウイ氏のアルバムの最大特徴、
全部が名曲となっています。
曲は曲が求めるまま、カットアップになり得ない。
次から次へと名曲が名曲を呼び、ラストは否応も無い大ラストになる。
ビッグ・ブラザー
ぴよぴよ、ぷうぷう、ぽにょぽにょ、つぶつぶ
懸命の果ていたるは、いつもの様にギャグになるほどの。
ここまでやってしもうて、犬、自分を喰ってしまう羽目になり、
ボイちゃん顔色悪し時代への突入です。

(山)2009.1.7
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Diamond Dogs - 30th Anniversary Edition
ダイアモンドの犬(紙ジャケット仕様)

ろっくす特製でかいジャケットのページ也。

DAVID BOWIE - 1984
http://jp.youtube.com/watch?v=gH9WnSOISv0
david bowie - we are the dead
http://jp.youtube.com/watch?v=xBF9t-bGVrE
David Bowie - Diamond Dogs TV Commercial
http://jp.youtube.com/watch?v=F7YRHgmU0NE
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ろっくすデヴィッド・ボウイ氏のページ
資料
資料(小説1984)
資料(英版)
English Version
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