NPO法人ウルトラ警備団
第4回:帰ってきた男(4)
「あのあと・・・・
聞きたいですか、この話?カッコ悪いんであまり話したくないんですが・・」

「無理にとは言わんが・・。」

「じゃあ、何か他の話を・・・。」

「駄目。聞きたい。あれだけ心配したんだから。聞かせてダン。」

「わかったよ・・・じゃあ話します。
あのあと残りの力を振り絞って国まで必死に飛んだんですけど。
道程の2/3の箇所で力尽きてしまったんです。
もう駄目かと思った瞬間、急を急いでこちらにむかっていた上司が助けてくれまして。
国に到着してすぐ病院に入りました。
それから皆さん、ご存知のように
各部の累積疲労のためと、力尽きて宇宙で死に掛けた際の脳内酸素の欠乏の為、昏睡状態に。
それが32年間続いたんです。
32年後の7月28日英国チャートに34位初登場・・じゃないや、昏睡状態から目覚めまして。」

「そりゃ良かった。」

「うん、良かった。」

「はい。おかげさまで。
だけど、人間もそうでしょう。長い間、寝たきりでいると体力が落ちてしまいます。
私も例外ではありません。
体も心も力がすっかり落ちてしまいました。記憶もほとんど失ってしまっていたんです。
そこから少しづつ少しづつリハビリを行いまして・・・
何とか通常生活に戻れるようになったのがつい1年前の8月13日、米国チャートに40位で初登場・・・
ではなくて、
退院することが出来ました。」

「良かったわ。ほんとに。」

「それがあんまりよくないんだ、アンヌ。
退院することが出来たんだけど隊員にはなれず・・なんちゃって。」
しーーん

「あ、ご、ごほん。
退院出来たんだけど、行くところが無くてね。
超能力は年齢と寝たきりのせいですっかり弱ってて、恒点観測員に戻ることも出来ない。」

「ご家族や親戚の方は?・・・・奥様だって・・・」

「いや、僕はあっちでも独身だったんだよ。家族持ちではるばるこんなところまでやってきたりはしない。」

「こんなところとはご挨拶だなあ。それに地球では家族持ちでも遥か彼方に単身赴任させられるぜ。」

「あ、これは・・つい、うっかり。地球は宇宙全体から言えばとんでもない田舎と思われていたもんで。」

「そうなのか。じゃ、何でそもそもお前さんはこんなところにまで・・」

「話さなきゃいけないですか?」

「うん。」

「実は・・・若い時、国でちょっとした問題を起こしまして・・・。」

「何?その問題って。」

「もしかして・・・これか。まさか。」

「そのまさかです。恒星観測隊の隊長の娘と付き合ってまして、それ、ドタキャンしちゃって他の娘と付き合っちゃったんです。」

「あら、ひどい。許せない。それなら当然ね。
それでその娘さんとは結婚したの。」

「いや、フられちゃったんです。
だもんで志願しまして。とにかく国を離れたかったもので。」

「何か生臭い話だな・・・・とすると今までここに来ていたウルトラ戦士ってのは・・」

「そうです。何かしら訳有りの奴らばっか。劣等生だったりお荷物だったり弱かったり。」

「うーん、何か思い当たる節が。」

「で、話を戻しますが、いくところが無くて、結局思いついたのが思い出深いこの地球。
国にはもう未練も何も無かったんで、戻って来たんです。」

「そうだったのか。すまん。ダン。
お前の人生を滅茶苦茶にしてしまって。」

「いや、とんでもない。ここにいた時にしたことは自分でも誇れることです。
自分の人生そのもの。こちらから感謝したいくらいで。」
・・・・・・・

「お前、さっき、超能力を無くしたって言ってたな。
今でも変身出来るのか?」

「はい、出来ます。」

「お、それは良かった。」

「30秒だけ。」
えーーーーーっ
一同仰天する。
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