2006年11月29日

Our Friend from Frolix 8 / Philip Kindred Dick 1970

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Our Friend from Frolix 8
Philip Kindred Dick
1970


ロックはSFだ、てこたあSFはロックだの
「ロックSFマガジン」第2号です。特集は再び最もロックな作家、フィリップ・K・ディック士。君子近づくに危うからず。アッシュ、タル、ジャクソンBさんらと共に一回入ると抜け出せないんだよディク世界。
今回のお話は

フロリクス8から来た友人
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1970年作です。
何がロックって、「ボブ・ディランより前には詩人はいないかと思ってた。」とのたもう噛み付き少女が出て来ます。それに対する主人公の答えは「ディランより前にもいくらでも詩人はいるんだよ。」その主人公、今回の職業は、タイヤ溝彫り人。なんじゃそりゃ。磨り減ったタイヤの溝を再び彫って新品同様に見せかけて売るつう。下手すりゃ使った人はドカン&バースト。地味なくせにヤバい職業だ。親よりその技術を受け継ぎ因果な事にその事だけは天才的だちゅう。


Bob Dylan - Subterranean Homesick Blues
http://www.youtube.com/watch?v=2-xIulyVsG8


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舞台は2100年より後の地球。30世紀ってことになるか。その未来社会では突然変異で天才化した「新人」と呼ばれる人類と、同じく突然変異で出現したテレパシーなどの超能力を持つ「異人」、合わせて6千人あまりが世界を支配してる。今までの人類は皆「旧人」と呼ばれ。その体勢に反逆しようとする連中は「下級人」と呼ばれ徹底的に弾圧される。正体が判明すれば月の強制キャンプに即送還。一生牢獄暮らし。「新人」「異人」間でもいざとなれば互いを叩きのめしててめえだけが支配出来るように陰謀画策あり。当然大多数の「旧人」はそんな体勢に満足してる訳は無く、密かに救世主を待っている。その救世主は英雄「プロヴォーニ」。地球を離れてどこかにいるかも知れない宇宙人に助けを求めに行ってる宇宙旅行最中。全員その帰還を待ちわび、新人・異人はそれを恐れているって訳だ。

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例によって主人公は全く冴えないおっさんであります。そんな体制に逆らおうなどとは夢にも思っていない。子供は「新人」に違いないと思い込み、公務員試験(新人しか受からない)に通ってくれることだけが夢。それがあまりに平凡なんで体制側の「代表的旧人」としてサンプル監視されてしまってるってことが運命の分かれ道。5千円1万円5万円10万円ガッチリ買いまショー。
そんな彼がぶち切れるきっかけはーーーーーーー
唯一の夢、子供の受験で、絶対答えられるはずの無い問題を出されて、落第させられてしまってから。実際、やつらは受からせてやることなどなるものかと意図して出しやがった。表面的には全部に解放されているその試験。儚い希望で旧人たちを取り込む作戦です。
それをきっかけに、タイヤ溝堀屋の、まあ、上司か、友達が「レジスタンス〜下級人」であることがわかり、禁止されてる酒を飲み、その勢いで禁書を売ってるアジトに行って、噛み付き少女に出会い、騒ぎにまきこまれーの、カーチェイス有りーの、これまた恒例、主人公とゆうより事件の狂言廻しの役割となりもうす。

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タイトルの「フロリクス8」から来た友人てのは宇宙人のことです。地球を救ってくれる彼たるや、ウルトラマンでもセブンでも無く、えりゃあかっこわるいお姿。ただしトンでもなく無敵。きっとディックさん、ウルトラQのバルンガを見たに違いなし。まさかー。
「新人」「異人」どもの悪逆非道さは読んでて叫びたくなるほどむかつきます。特殊な才能がたまたまあるだけで、実態はまったくの俗物。いわゆる汚ねえクソ親父がてめえの欲望と権力維持の為だけに日々生きてる。
ラストはこれまたディック節。一つのすっきりした解決とは言えないやつ。これが良かったのか、はなはだしく残酷なのか。それは是非お読みになって感じて下さい。

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 前回、感謝させて貰った「火星のタイムスリップ」ではディック師匠、9割方暗黒、苦しんで苦しんで、最後の最後で無理やり己救わなきゃなんとしようってものでした。今回の空気は「ハイ」です。やたらウキウキしてる。体調が良かったか、その着想に快感を得ていたか。ジュダス・プリーストのシナーみたいにメロディーがどんどん上がって行ってドッカーンしてるよ。

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改めて感じるにディックさんの小説、まさしく今を描いてるってこと。「新人」も「異人」もいるじゃないですか。ただし超能力持ちじゃなくて「コネ」と「血縁」と「既得権益」の。官僚社会ってのも同じ。儚い希望持たされてそれが何が「アメリカン・ドリーム」だ、結局こき使われるのも同じ。
抵抗すれば骨抜きにされるか、それとも抹殺させられるか。ますますひどい状況に追い込もうとするに違い無い。弱らせて疲れさせて考える能力を無くさせればあっちのものじゃき。

そんで、我々には救世主が来るのか。救世主は救世主なのか?むー。そこがこの話のミソで。

つまるところ
黄門様がよく申される「お天道さまは見ている」
そして「調子に乗り過ぎたヤツは自らの手で自らを滅ぼす。」
これまた真実です。
大底こそ最大のチャンスなり。

メタル&ハードかけながら読んで気迫喰い取ろう。

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(山)2006.11.29

ろっくすSFロックのページ

でかいジャケットのページ

入手先参考(日本文庫紙、アマゾン)

ディックな動画

Rare Philip K Dick interview
http://www.youtube.com/watch?v=7Ewcp6Nm-rQ



The English translation page : here.
posted by 山 at 08:43| Comment(0) | TrackBack(0) | sf pop | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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